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泉美木蘭
2016.7.22 05:20

「やりがい」をエサにして搾取する個人請負

クローズアップ現代で「個人請負」として働かされている若者の
実態
を見たけど悲惨すぎるよーーー。
アルバイトやパートではなく、「個人事業主との業務委託契約」
という形で会社と契約し、異常な低賃金&長時間労働に陥っていく。

個人請負は、特殊な専門的技術と、実力のみで稼ぐ形態。
プロスポーツ選手、芸能人、デザイナー、ゲームクリエイター、
プログラマー、職人、フリーライター、ジャーナリスト、コンサルタント、
写真家、音楽家、漫画家・・・
能力があれば、実力で這い上がって食っていく道が開けるけれど、
そんなのは、ごく一部の人間、ほとんどは掃いて捨てるクズ扱いと
なっていく。

この契約形態が、企業側にとっては都合がよく、マッサージ店や
飲食チェーン、バイク便などの一般サービス業にまで広がっている。

個人請負として契約した人は、あくまでも「自己責任の個人事業主」
であり、「会社の労働者」とはならないから、労働基準法などの法律が
適用外。

結果、なんの権利もない状態に置かれ、安い賃金で長時間、ノルマを
かけられて
体を壊すまで働かされ、捨てられるケースが相次いでいる。
仕事中に怪我をしても、労災保険法の適用外だと突き放され、
「使い物にならないのは自己責任」として、契約解除されるのだ。

13時間働いて、賃金がたった3000円程度という運送業、
マッサージ店の30代男性は、長時間労働で親指が腱鞘炎を起こし、
労働時間の改善を求めたところ、邪魔者扱いされて契約解除された

という。

大学に通うために480万円の奨学金を背負い、それでも学費が足りず、
「短時間&実力次第で大金が稼げる」というホスト業界に入ったという
男子は、
他人なのに見ていて将来が不安になった。
月2万円の寮に入って、布団一枚のプライベートスペースで寝起きし、
結果、月収たったの万円。
ホストが実力次第の世界というのは、昔からのことで、いまさらだけど、
奨学金を背負ったために、
まったくその世界に興味がなく、夜の商売
をやりたくもないのに、足を踏み入れてしまう
男子が増えているのだ、と。

ホストなんて、派手に見えるけれども、ほとんどは指名客がつかないし、
指名がなければ、毎晩、一晩中、力いっぱい頑張っても稼ぎにならない。
売れっ子ホストのヘルプのために、体壊すまで酒を飲むのが仕事だし。
指名がとれたら、一日中、何人もの女とメールや電話、デートもして、
とにかく繋がっているのが仕事になる

店に出るのは短時間でも、その「勤務時間」以外の日常生活すべてを
ホストとしての時間に使わなければならなくなる世界でもあるのよ。
借金を返しながら、勉強しながら、勝ち残れるのだろうか・・・。

「腕一本で大金を稼げる!」
という言葉に、下積みとしてのやりがいを持ち、そして、その「やりがい」を
杭にして、使い物にならない抜け殻になるまで搾取されていく若者たち。
完全なる個人のレベルで、その世界へ挑戦し、敗れ去るのは仕方がない
けれど、
いま起きているのは、企業・社会全体の利益追求、コスト削減のために
「自己責任」の個人請負が一般的に広がり、多くの貧困の若者がその
搾取の渦のなかへ巻き込まれていくという状態。
巨悪の問題だと思う。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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